第六回シンポジウムの報告および報告要旨

去る9月19日(土)に早稲田大学において当研究所の第六回シンポジウムが開催されました。
早稲田大学人文科学研究センター・研究部門「ヨーロッパ基層文化の学際的研究」との共催でした。



プログラムおよび報告要旨は以下の通りです。
お名前からはテキスト記事、()内からはPDF版の要旨記事にリンクを張っております。

早稲田大学ヨーロッパ中世・ルネサンス研究所第六回シンポジウム
日時:2015年9月19日(土)14時~18時
場所:早稲田大学戸山キャンパス39号館2階2219教室(美術史実習室)

タイトル:「中世ヨーロッパの写本とキリスト教文化」
司会:甚野尚志(早稲田大学教授)

報告(1)「旧約聖書写本挿絵-預言書と八大書写本を中心に」(PDF版
瀧口美香
(明治大学准教授)

報告(2)「「中世ラテン語 « remicha » をめぐって」(PDF版

西間木真
(早稲田大学ヨーロッパ中世・ルネサンス研究所招聘研究員)

報告(3)
「ナジアンゾスのグレゴリオスはどう受容されたか-中世ロシア写本におけるテクストの継承と変容」
(PDF版
三浦清美
(電気通信大学教授)

コメント:益田朋幸(早稲田大学教授)

報告:


瀧口氏は、10世紀半ばから13世紀にかけて制作された現存するビザンティンの旧約聖書写本挿絵、とりわけ、特徴的な発展を遂げた八大書と預言書写本を中心に紹介された。ヴァイツマンとラウデンという写本挿絵研究の二大潮流の研究手法を踏まえながら、預言者の描き分け、背景描写、擬人像に関するギリシア語表題分析、末尾を飾るルツ記の図像解釈など、多角的かつ大胆な検討をなされた。


西間木氏は、11世紀から12世紀のフランスの音楽理論に関する諸写本を調査されるなかで、現在、パリの国立図書館に所蔵されている写本に、これまで知られていなかったラテン語を確認した。今回の報告では当時の音楽理論との関わりからその語の意味を推定された。



三浦氏は、14世紀から17世紀の5点の中世ロシア写本に残る説教集、とりわけ著名な教父ナジアンゾスのグレゴリオスに帰せられながら、ギリシア語からの翻訳の際、大きく改変され、原典テクストが反映されていないと評される作例を詳細に検討された。その結果、異教風俗の論難という主眼や、論術方法など原典と多くの共通点が見いだされ、説教集のテキストは形を変えながらもグレゴリオスの精神を着実に受容していたことが明らかになった。




盛況であり、また活発な質疑応答がなされたことも記して感謝申し上げます。
お運びくださった皆様、ありがとうございました。



(文責:毛塚)

第十九回研究会の報告および報告要旨

去る6月27日(土)に早稲田大学において当研究所の第十九回研究会が開催されました。

高等研究所セミナーシリーズ【研究エリア〈新しい世界史像の可能性〉】との共催でした。

プログラムおよび報告要旨は以下の通りです。
お名前からはテキスト記事、()内からはPDF版の要旨記事にリンクを張っております。
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第十九回研究会
日時:2015年6月27日(土)14時~17時半
場所:早稲田大学戸山キャンパス39号館2階2219教室(美術史実習室)
報告:

「「復古」と「一なる教会・一なるキリスト」:12世紀キリキア・アルメニアにおける教会合同をめぐる言説と歴史意識」(PDF版
浜田華練
(東京大学大学院総合文化研究科博士課程)


「アヴィニョン・ナポリ・プラハの宮廷写本(1320-70年頃)―国際的ゴシック様式の形成に関する寄与―」(PDF版
大野松彦
(東京藝術大学大学院専門研究員)





浜田氏は12世紀後半のアルメニア教会とビザンツ帝国との教会合同交渉において、伝統的なキリスト論がどのように提示されたかという点をアルメニア語、ギリシア語などの各史料を挙げながら詳細に分析された。アルメニア教会の指導者ネルセス・シュノルハリが独自に発展を見せたキリストの神性と人性を合一を教会合同を推進する教義的な根拠として敷衍させたことを明らかにされた。



大野氏は14世紀の装飾写本における国際ゴシック様式の広がりと発展について、アヴィニョン、ナポリ、プラハの各宮廷工房で制作された作例を比較され、詳細に検証された。とくに近年の研究で着目されるアヴィニョンの画家とその挿絵様式は、各地の様式が混交する先駆けとなり、ナポリとプラハとに影響を相互に与え合い続け、王侯貴族や聖職者の庇護と作品や作家の交流に伴って高度に洗練されていくという流れを提示された。



盛況であり、また活発な質疑応答がなされたことも付して感謝申し上げます。
お運びくださった皆様、ありがとうございました。


(文責:毛塚)

第十八回研究会報告および報告要旨

去る4月18日(土)に早稲田大学において当研究所の第十八回研究会が開催されました。


高等研究所セミナーシリーズ【研究エリア〈新しい世界史像の可能性〉】との共催でした。

プログラムおよび報告要旨は以下の通りです。
()内からはPDF版の要旨記事にリンクを張っております。
各要旨のテキスト版はこちらになります。

「トルヴェールの作品校訂に関する問題:ペラン・ダンジクールの例(13世紀半ば)」(PDF版
佐藤ヴェスィエール吾郎(パリ第4大学大学院博士課程)

「「調和をもたらす王」と音楽の隠喩――リチャード2世治下のイングランドにおける君主鑑と王権」(PDF版
武田啓佑(早稲田大学大学院博士課程)


「エックハルト思想における<中間のもの>(medium)概念と<離脱>」(PDF版
若松功一郎(早稲田大学大学院博士課程)


佐藤氏は13世紀半ばのトルヴェールの作品が収録された写本群から、ペラン・ダンジクールの作品を軸に、新たな本文校訂を試みる研究を紹介された。先行研究とその方法論の問題点を、具体的な作品と写本のテキストを挙げて詳細に検討し、そのうえで特定の写本を底本に選択した経緯と独自の校訂例を明らかにされた。


武田氏は中世後期イングランドの王権と音楽との思想的・政治的な関連性を、リチャード2世とジョン・ガワー(1330?-1408)の著作を中心に詳細に検討された。ガワ―の作品においては世界の調和と音楽が結び付けられ、音楽家のように王国を調和させる古代的な理想王が描かれるが、一方で君主鑑的な伝統と、国王自身の王権概念・実践的な音楽利用との間に隔たりが存在することも明らかになった。



若松氏は14世紀初頭の神学者エックハルトのドイツ語著作において語られる「離脱」の教説をラテン語著作から分析された。「離脱」では神の意に叶うために人間がとるあらゆる手段が棄却されるが、この手段はラテン語著作における中間のもの(medium)に相当し、エックハルトが神と人との関係を三位一体の父と子になぞらえるために媒介的なものは否定されるという論理的基盤を指摘された。





盛況であり、また活発な質疑応答がなされたことも付して感謝申し上げます。
お運びくださった皆様、ありがとうございました。


(文責:鈴木、毛塚)

第十七回研究会の報告および報告要旨

去る11月8日(土)に早稲田大学において当研究所の第十七回研究会が開催されました。
早稲田大学高等研究所セミナーシリーズ〈新しい世界史像の可能性〉との共催でした。


プログラムおよび報告要旨は以下の通りです。
()内からはPDF版、報告者のお名前からはテキスト版の要旨記事にリンクを張っております。


「「コンスタンティヌスの間」における教皇クレメンス7世の肖像と標章」(PDF版
深田麻里亜(日本学術振興会特別研究員)


「森林、河川、紛争解決―帝国都市アウクスブルクの史料から」(PDF版
渡邉裕一(日本学術振興会特別研究員)




深田氏は1520~1524年にかけてヴァティカン宮殿の「コンスタンティヌスの間」の壁画に描かれた歴代教皇像のうち、クレメンス7世を中心に分析され、肖像に添えられた擬人像や中世に遡る象徴的なモティーフに教皇の権威が託されている点を指摘された。




渡邉氏は16世紀アウクスブルクでの木材の供給において、周辺諸侯や周辺都市との政治的な関係、とりわけ河川による運送で問題が頻発していた上流の都市との軋轢の処理の数々を史料によって明らかにされ、これらの密接な交渉が周辺諸侯の森林に関する法制度化にも結びついたという仮説を提示された。




盛況であり、また活発な質疑応答がなされたことも付して感謝申し上げます。
お運びくださった皆様、ありがとうございました。


(文責:毛塚)

第五回シンポジウムの報告と報告要旨

去る9月27日(土)に早稲田大学において当研究所の第五回シンポジウムが開催されました。
全体のテーマは「宗教の衝突、和解と融合:その歴史的・美術史的考察―スペイン、ラテンアメリカ、日本の各視座から―」でした。
プログラムおよび報告要旨は以下の通りです。

()内からはPDF版、にリンクを張っております。
テキスト版の要旨記事はこちらです。

プログラム

開会の辞 甚野尚志 (早稲田大学文学学術院教授)ヨーロッパ中世・ルネサンス研究所 所長

趣旨説明 大髙保二郎 (早稲田大学文学学術院教授) 「衝突と融合による美術的な変貌」


大髙氏による趣旨説明ではスペインにおける諸宗教の「衝突と融合」の表れた多彩な美術作品が紹介され、シンポジウムへの問題提起がなされた。



研究報告1 関 哲行(流通経済大学社会学部教授)
「中近世スペインにおける三つの一神教の対立と共存」

(PDF版要旨

 関氏は、サンティアゴ・デ・コンポステーラの王立施療院兄弟団を皮切りに、14世紀末のユダヤ人兄弟団や、亡命したマラーノのヨセフ・ナシ、15世紀のムモリスコの兄弟団など、政治的に差別され改宗や亡命を余議なくされたユダヤ教やイスラム教の人々の社会的な相互扶助の例を挙げ、中近世スペイン社会における三宗教の「対立と共存」について紹介された。

研究報告2 岡田裕成 (大阪大学文学研究科教授)
 「聖母、征服者、先住民首長―アンデスにおける聖像受容の政治学」

(PDF版要旨

岡田氏は、スペインの植民地アンデスの先住民にキリスト教がどのように受け入れられたのか、という問題に関して、しばしば「習合」や「融合」という言葉で語られる改宗の経緯を、先住民の彫刻家ティト・ユパンキによって制作された《コパカバーナの聖母》を中心に、歴史的、政治的な背景から詳細な考察を加えた。


研究報告3 児嶋由枝(上智大学文学部准教授)
 「西欧カトリック改革美術とキリシタン美術―聖像の受容と変容をめぐって」

(PDF版要旨

児嶋氏は、トレント公会議後のイタリアの宣教美術が日本においてどのように受容され、伝承されてきたかという点について、16世紀末に来日し絵画を伝えたイエズス会士のジョバンニ・コラ、長崎に残る《雪のサンタ・マリア》の図像分析、そして生月に伝わるかくれキリシタンの「お掛け絵」などを現地調査に基づく作例を挙げて紹介された。




盛況であり、また活発な質疑応答がなされたことも付して感謝申し上げます。
お運びくださった皆様、ありがとうございました。



次回は11月8日(土)開催の第十七回研究会となります。

(文責:毛塚)
プロフィール

ヨーロッパ中世・ルネサンス研究所

Author:ヨーロッパ中世・ルネサンス研究所
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